Menu

教員座談会

Teacher's Discussion

ほんとうに必要な教育って
何だろう?

PBL 型授業やSTEAM 教育など、革新的な教育をハイブリッドで展開する和洋九段。
その一方で、定評のあるきめ細かな基礎学力養成にもこだわり続けています。
生徒一人ひとりと、日々温もりを感じることのできる距離で接している中高の先生方が、
PBL 型授業重視と基礎学力養成重視の立場に分かれて、熱い議論を交わしました。

PBL型授業を重視したい

不確実な時代だからこそ、正解のないものを見つけ問題解決をする力が必要です。

基礎学力養成を重視したい

将来の選択肢を広げるためにも、幅広く基礎知識を身につけ「知恵」にして欲しい。

Member

高2学年主任
佐藤 紀子先生
PBL型授業
中2学年主任
中原 静香先生
PBL型授業
高3学年主任
木津 奈々江先生
基礎学力養成
中1学年主任
中村 保子先生
基礎学力養成

PBLを通して学んだ経験は生きる糧としてもつながっていく

中原先生そもそもPBLは「問題解決型学習」「課題解決型学習」などと訳される学習法ですが、例えば、「体育祭で行う『扇の舞』を成功させるにはどうしたらいい?」というテーマをもとに、担当委員たちの間でPBLを応用する機会があります。本校ではすでに定着している学び方といっても過言ではないでしょう。

木津先生私は5年連続で高2~3の授業を持っているので、大学受験を視野に入れた授業をしなくてはいけないという気持ちが強いです。どうしても授業の中で過去問や演習問題を扱わなくてはなりませんので、PBLの重要性よりも、「いやいや、まずは基礎学力重視でしょう」と言わざるを得ないのです。

佐藤先生私もここ6年ほど、高校の授業を担当しているので木津先生のおっしゃることがよくわかります。ただ興味深いのは、今の高2と接していると、PBLの経験からグループになって意見交換することに慣れていますし、発表がしっかりしていますよ。

中村先生そうは言っても、昔ながらの“ 読み・書き・そろばん”とまでは言いませんが、やはり「じっくりと基礎学力を固めてからのPBL」と、そんなふうに思うことがありますね。

中原先生PBLは、「人前で話す」とか「調べた結果を発表する」とか、そのトリガーに対して自分の答えを見つけるということなのですが、将来的に大学受験や、さらにその先の社会人に…となった時に、PBLを通して学んだ経験は生きる糧としてもつながっていくものと考えています。つまりそういった場に慣れておくことも重要なのです。

中村先生中原先生がおっしゃるように、PBLを通して身につけた力は確かに社会に出てからも活きるものでしょう。ただ生徒によってはPBLに対しての苦手意識もあります。生徒それぞれの個性を活かしながら、そこはきめ細かくケアしてあげたいところですね。

中原先生もちろん全員が得意なわけではありませんが、逆に上手な生徒の真似をしていくところから、自分の埋もれていた才能に気づくこともあります。単に人前で話をすることだけではなく、自分が結論を出したことについて、自信をもって発表できるということが、6年間を通して磨かれていくところにもPBLの魅力があると考えています。

どんなに話し上手でも基礎学力がないと合格が難しい現実も

木津先生例えば、本校では総合型入試で大学進学を目指す生徒が増えていますが、プレゼンを課す大学、グループディスカッションを課す大学があるのと同様に、それでも学科試験を重視する大学が数多くあるのも事実です。

中村先生確かにそれは言えますね。PBLが最強の武器というわけではありません。

木津先生生徒たちからすれば、「総合型ならもしかしたら受かるかも」と期待したくなるのもわかりますが、どんなに話し上手でも、やはり基礎学力がないと合格は難しいというのは、残念ながら今年も経験しました。その辺りはどうですか?

佐藤先生はい、そこは同意します。ただプレゼンに一生懸命に取り組むことで、教科学習の成績に好循環がうまれる生徒もいますよ。

中原先生中学生は高校生と違って、同じグループに仲の良い子がいる・いないで、PBLが好きにも嫌いにもなります。「先生、この授業は嫌だ」と、はっきり言う生徒も現実にはいます。でもさまざまな教科で多くの経験を積んで、頑張ってやっていくから少しずつ自信を持って前向きに取り組めるようになっていきます。

中村先生みんなが話し上手ではないからこそ、推薦に頼ってしまいがちなところを基礎学力の強化で何とかしてあげたいと思うのです。今の生徒たちがこの先、不確実な時代を生きていくためにも、どの教科においても幅広く基礎知識を身につけて、さらに知恵として臨機応変に使えるようにしていくことは必要でしょうね。

PBL&基礎学力養成の徹底で将来の選択肢を狭めない一人ひとりへ

佐藤先生不確実な時代を生きるといえば、高1では長野県での民泊体験と農業体験をきっかけとして、プロジェクト型PBLに取り組んでいます。『人口減少に悩む地域を元気にするにはどうすればよいか?』という難易度の高いプロジェクトを通して、食物系に興味を持つようになり、大学もそういう方面を考え始めているという生徒が出てきました。

中村先生家庭科の授業でも、高齢化社会で自分たちにどんなことができるのかについて、中学の早いうちから考えてもらっています。家庭科の場合はアクティブラーニング型の授業が多いのですが、「こんなことをしたらどうかな?」というのを、みんなで考えています。

木津先生私は基礎学力重視の人間なので、そういう問題になると悩んでしまいますが、ただ受験を迎えた生徒たちを見ていて思うのは、以前に比べて大学名で進学先を決める傾向が弱まってきたことです。「将来こういう仕事に就きたいからこういう学部・学科に行きたい」と、具体的な理由を見つけている生徒が増えています。「だったらしっかり勉強して第一希望に合格しましょう」という話です。だからPBLも基礎学力もどっちも備えていないと、将来の選択肢が狭まる、やりたいことができなくなるということなのだと思います。「総合型なのになんで試験があるの?」なんて言っている場合ではないですよね。

佐藤先生最近の生徒たちが「ここに行きたい」とはっきり言うようになってきたのは、コース制が改めて整備された今の大学1年生からですね。「これをやりたい」「ここに行きたい」という生徒一人ひとりの明確な気持ちを、しっかりと応援していきたいです。

中原先生PBLってそもそも、正解のないものを見つける、問題解決をするということなのですが、将来、生徒たちがどんな問題を抱えて、それをどうやって解決していくかというのは、本校での6年間を経験することで、より具体的になっていくわけです。その意味でも、基礎学力をしっかり身につけたうえで、PBLの経験値も積んで不確実な時代を力強く生きていってほしいと願っています。

中村先生魅力あふれる人への成長を手助けしていきたいと思います。応援しています。