Stories
-インタビューを通して和洋生の成長をお伝えするStories。54回目となる今回は、高3のYさんにお話をうかがっていきたいと思います。よろしくお願いします。
よろしくお願いします。
-では、インタビューに入っていきましょう。幼い頃はどんな子でしたか?
公園で滑り台をやりたくても他の子と一緒にやるということはなくて、皆が帰るまで公園の端っこで座って待っているような子だったと母が言っていました。私は一人っ子なので幼稚園に通っている時だけ同世代の子と話すことができて楽しかった思い出があります。
-そうなんですね。小学校に入ってからはどうでしたか?
小学校の時は、友だちとワイワイするのは好きだけど、授業中に手をあげることはしないし、全校集会などで人の前で話をするようなことは好きではなくて、自分からしようとするタイプではありませんでした。
-なぜそうしていたんでしょうね?
意見を否定されるのが怖かったし、人と違う意見だということに抵抗感があったのかもしれません。
私が通っていた小学校は8割くらいの人が中学受験をする学校で、毎日塾に通って何時間も勉強をしている人が多かったので、私よりはるかに知識を持っている人がたくさんいて、授業の時は勝手に差を感じていたのだと思います。
-何かそういうことを感じる体験があったのでしょうか?
いえ、実際に嫌なことがあったわけではないんですけど、例えば和洋のPBLで出される問いは絶対的な答えがあるわけではないですよね。でも小学生の時の特に5教科の問題は答えがあることが多かったので、そう感じたのだと思います。
-そうなんですね。
-学級活動で発言することもありましたよね?そういうのは答えが決まっているという問いではなかったのではないですか?
はい、ありました。でもその時は全員が発言を求められていたので発言していたという感じで、それ以外は極力発言しないようにしていました。
-大勢の前で発言するのも好きではなかったということですが、そういう機会はなかったのですか?
担任の先生から「Yさん、代表委員やってみない?」と声をかけてもらったこともあったんですけど、「やりたくないです」と答えていました(笑)。
唯一、人前に出て充実していたのは小学4年生の時の学芸会で、主役を演じたことです。「魔法を捨てたマジョリン」という劇で、主役のマジョリンを演じました。この時は自分で主役を志望して、オーディションを受けました。今思い返すと、この時が初めて自分の意思でアクションを起こした時かなと思います。
初めてチャレンジをして、見てくださった多くの人から「良かったよ」と言ってもらえたことが、中学校で積極性を伸ばしたいという思いのきっかけになったのだと思います。
-そういう体験もあったんですね。良かったです(笑)。
-小学校の時に何か習い事はしていましたか?
一番長く続いたのが3歳から小学4年生まで続けていたピアノです。1年に1回ある発表会に向けて日々練習を頑張っていました。 でも、4年生の時に塾と日程が重なってやめてしまいました。
あと、小4から小6まで週に1回テニスを習っていました。きっかけとしては、私は喘息を持っていて、小さい頃、喘息のせいでよさこいの大会など大事な行事に出られないという経験が何度かあり、その度に残念な思いをしていたので、体力をつけたいと思ったことでした。
-Yさんは中高でもテニス部ですよね。好きなものを続けていけるのは素敵なことですね。中学でもやりたいと思ったのはなぜですか?
テニスは個人競技ではあるんですけど色々な人と協力し合って、励まし合いながら行う部分が多く、そこに魅力を感じていました。小学校が同じ友だちと一緒にやっていたので楽しく続けられて、中学校でもやりたいなと思っていました。クラブ体験会に参加した時には先生や先輩の雰囲気が良かったのもあって、テニス部に入ることにしました。
-そうなんですね。和洋に入学してからのことは、後ほど聞いていきたいと思います。
-では次に、中学受験のことを伺います。受験をしようと決めたのはどのような流れでしたか?
さっきも話したとおり、周りに中学受験をする人が多くいて、外で遊ぶ時も「塾があるから行けない」と言われることが多くなって、自分もなんとなく地元の中学に行くのではなくて、自分で行きたいと思える学校で学びたいなと考えるようになりました。
-なるほど。そのような中で和洋九段を受験することにしたのはなぜですか?
きっかけは母が勧めてくれたことです。家からの距離や、学びたい内容を元に提案してくれました。放課後に見学をさせてもらった時、先生1人と高2の生徒さん2人が案内をしてくれました。その時の雰囲気がとても良くて、この学校がいいな、と思いました。質問に答えてくれるだけでなくて先輩の方から積極的に話しかけてくれて、「この学校では積極的に話す機会が多いよ!」「和洋の学校生活は楽しいよ!」と教えてくださいました。
-小学校の時に消極的だったYさんにとっては「積極的に話す機会が多い」というのはハードルが高かったのではないですか?
自分で消極的な性格だとわかっていたので、積極的に話せるようになりたいと考えていました。それで、和洋ではPBL授業があっていいな、と思いました。
-実際に入学してPBL型授業を受けてどうでしたか?
入学してすぐはやはり戸惑いがありました。でも、プレゼンテーションの基礎から色々と教えてもらって、「アイコンタクト」「ボディランゲージ」「(え~・あの~などの)ヒゲなし」という3つのポイントに気をつけながら何度も行ううちに慣れていきました。
-しっかり身についていったんですね。
-Yさんは真面目な生徒だというお話を色々なところから耳にしているのですが、小さい頃からそうだったんですか?
そうですね。小さい頃から全部やらないと気がすまない性格で、親から「やりなさい」と言われたことは一度もなくて、いつも「もうやめなさい」と言われています(笑)。後回しにしたくなくて、やれることはその日のうちにやってしまわないと気がすまないんです。
-それはすごいですね(笑)。まねしようと思ってもできません。
-和洋でもそれが続いていたんですね。
部活は中高6年間、ひたすら真面目に取り組んでいたと思います。ただ、学校の試験に真剣に取り組むようになったのにはきっかけがあります。私は誰かより上になりたいと思ったことはなかったんですけど、初めての定期試験の後に「Yちゃんに勝った!」と友だちに言われて、次はもっと頑張りたいな、と思ったんです。次の定期試験でできる限り頑張ったら、頑張った分だけ成績が伸びたのが嬉しくて、次にもうちょっと頑張ったらまた伸びて…。それを繰り返していた感じです。誰かに勝ちたいというのではなくて、頑張った分だけ成果が出るのが嬉しかったです。
-それを継続できたのがすばらしいですね。うまくいかない時はなかったんですか?
頑張って無駄になることはないと思っています。結果が思うようにならなくても、また同じように頑張ればいいし、それが自分にとってプラスになると思うんです。頑張ること自体が大切で、結果ではなくて自分が頑張った過程を大切にしています。
-なるほど。聞けば聞くほどすごいです(笑)。
-中学の時の思い出はどんなものがありますか?
文化祭でクラスの責任者ではなかったんですけど毎日残って手伝いをしていました。こういう行事は中高の時しかできないものがたくさんあるので、「今しかできないこと」を精一杯やりたいと思って。
-そこにも真面目さが出ていますね!どんなことをしたんですか?
クラスごとに国を決めてそれについて調べて書くというものをやったり、その頃は飲食もできたので、チケット制にして効率よく回転するように考えたり、メニューを大きく表示していくつも準備しなくて済むように考えたりしました。
-色々工夫しているんですね。そういう活動をしている時に気をつけていることはあるんですか?
役割にとらわれないようにしています。私はこの係だからこれしかしない、というのは嫌で、やれることはした方が良いと思うので、責任者だけに任せるようなことはしないようにして、手伝えることはしっかりするということを心がけています。
-そういう意識で協力してくれる人がいると、責任者をしていても助かりますよね。
-そういう意識はどういうところから出ているのでしょう?
両親の影響が大きいかもしれません。一緒に出かけて道を歩いている時に細い道で通れなくなっている車があったんです。その時に「こっちに来たらいいですよ」と助けていたことなど、困っている人に声をかけている姿を私が小さい頃から何回か見ていました。こういうことを見てきたので、ささいなことにも手を差し伸べられるようになりたいなと思ったのだと思います。
-すばらしいですね。なかなかできないことだと思いますよ。
-中学時代の思い出は他にありますか?
中3の夏休みの宿題で「進路に関してアクションを起こそう!」というものがあったのですが、私は将来なりたい職業がなくて、漠然と「自分が関わった人を笑顔にできる仕事に就きたい」と考えていました。そのためには情報をネットで調べて集めるだけでなくて実際に体験することが大切だと思いました。中学生なので働いたこともないし自分以外の世代の人と関わったこともあまりないので、接客業を体験してみたいと思いました。友だちと一緒に身近な企業を考えてみて、一番笑顔や接客がいいなとなったのがスターバックスとマクドナルドでした。
スターバックスはその日のうちに店舗に行って「将来人を笑顔にするような職業に就くために体験をさせていただきたいのですが…」とお願いしたのですが、そういうのはやっていなくて、ということで断られてしまいました。
次にマクドナルドに電話をかけたところ、「ぜひお願いします」と言ってくださって、3日間体験をさせてもらいました。
-どんなことをさせてもらったんですか?
ハンバーガーやドリンクを作ったり、一番やりたかったレジでの接客もさせてもらいました。
-ほんとうのお客さんを相手にさせてもらったんですか?
そうです。今考えると中学生にそういうことをさせてくれたのはすごいことだなと思います。
-そうですね。貴重な体験だと思いますよ。
-実際体験してみてどうでしたか?
まず働くことの大変さと難しさを実感しました。覚えることがたくさんあったというのもありますが、お客さんだけでなくて様々な世代のスタッフの皆さんともコミュケーションを取る必要があり、それまでは同世代としかコミュニケーションを取ることがなかったので、自分より上の世代の方しかいない環境に入ったというのも新鮮でした。
-そこで得たものはありますか?
当初の目的である「どのようにしたらよく思ってもらえるような対応ができるか」について、体験するまでは笑顔で対応することを当たり前のこととして受け止めていましたが、実はとても難しいことなんだなと思いました。衛生的な面でも、お店に行くたびに机がきれいになっているのは、定期的に机を拭いたり消毒したりというのを行っていたからなんだな、と気づきました。私が体験したのはコロナ前だったんですけど、そういうことが行われているから清潔に保たれて、快適に利用できているようになっている、それでお客さんがたくさんやってきているということがわかりました。見えないところで行われていて人に気づかれないことでも、行動することが大切だなと思いました。
-すばらしい気づきですね。
-体験で他に気づいたことは何かありますか?
それまではあまり気になっていなかったんですけど、時間が経つとポテトやナゲットなどが捨てられてしまうのを見て、食品ロスに関心を持つようになり、高校に入ってから食品ロスについて考えるようになりました。まだ食べられるものを捨ててしまうのはもったいないなと感じましたし、捨てられてしまっているものがもし世界中で食べ物に困っている人たちの手に渡れば、豊かに生きられる人が増えるはずなので、自主活動で自分に何ができるかを考えて行動に移していきました。
-自主活動では実際にアクションまで行ったわけですね。
高1はコロナ禍で外の活動はできなかったので、知識を蓄えて行く時間が多くなりました。高2になって色々と動き始めて、実際にはうまくいなかったんですけど、まず子ども食堂のボランティアを行いたいと考えました。高校生なので毎日携わることができずに行えないことになってしまいましたが、こういう活動があるということを知れたのがよかったです。次に「自分たちより下の世代に食品ロスを認識してもらうにはどうしたらいいか?」という問いを立てて、グループの1人の子の母校(小学校)でセミナーを開催させてほしいとお願いしましたが、これもうまくいきませんでした。あとは、「食品ロスについて考えるすごろく」を作って、在校生や受験生に体験してもらいました。最後に23区で初めてSDGs未来都市に選ばれた豊島区の「ゴミ減量推進課」を訪問してどういう活動をしているのか質問をしてきました。
-うまくいかなかったこともあったようですが、その時どんなふうに乗り越えたんですか?
断られる時も、明確に理由を説明してくだったので、もっとこうすればよかったのかなというよりは、じゃあ、次はこっちに行ってみよう、という方が多かったです。
-すごろくを作る上での工夫した点はどんなところですか?
作る時に配慮したのが、自分たちより下の世代の子たちが体験した時に「楽しめること」「学べること」両方の要素をしっかり入れるという点でした。「手前取り」など簡単なワードも知らない人がいると思ったので、そういうワードも組み入れて自然に学べるようにしたことと、ルールとして止まったマスに書かれていることを読み上げてもらって、単に何マス進むというだけでなくてそれぞれのマスに込められた意味を参加している全員に共有してもらえるようにしました。
-今回の活動を通して、今後行っていきたいことなどありますか?
今回行えなかった子ども食堂のボランティアを大学生になったらやりたいです。あと、コンビニで廃棄されてしまう食品を急速冷凍して子ども食堂に届けるというものが行われていることを最近知ったので、他の場面でどのように応用できるかについて、実際には形にならなかったとしても考えてみたいです。
-いいですね。ぜひ考えてみてください!
-進路に繋がる体験も中3の時が始まりのようですね。
はい。これも課題が出て裁判を傍聴したのがきっかけでした。それまでは法律というのは遠くて固い存在というイメージしかなかったんですけど、実際に行ってみて、実は法律は自分たちにとても身近な存在だし、知っておいていいことしかないのではないかと思うようになって興味を持ちはじめました。
高校卒業後の進路を決める時に、自分が一番興味を持って学びたいと思ったのが法律で、裁判の傍聴は高3になってからも一度行きました。なりたい職業というのはまだ明確に決まっていませんが、法律を学ぶことで論理的に考える力をより高めることができると思うので、それを活かして人を笑顔にできるような仕事に就きたいです。
-高3で裁判を傍聴しに行った時はどんな感じだったんですか?
その時は2つの裁判を傍聴したんですけど、2つめの裁判が終わった後に裁判長の方が「何か質問がある方は残ってください」と言ってくださって、私は両親と一緒に行っていたのですが残っていくつか質問をさせていただきました。
-すごく積極的ですね。裁判で質問タイムがあることは想定していなかったでしょうし、あらかじめ準備していったわけではないですよね?
はい。その場で考えて質問しました。こんなチャンスはないと思って。裁判長の方は「犯罪を犯すことは悪いことだけど、被告人の心情や人格までを見抜くことが正しい判決を導くのに必要だと考えています」「裁判官という仕事は自分を成長させてくれます」「法学部に進むことで自分を成長させてくれますよ」と答えてくださいました。
-素敵な裁判官ですね。Yさんも将来目指してみてはいかがですか?
-高校では自主活動の話以外に何かありますか?
最近のことで言うと、ニュースでウクライナの問題を知り、学校で募金活動を行いました。報道されていることがすべて真実なのかどうか、私たちにはわからないけれど、それによって苦しんでいる人がいるということは事実だと思ったため、「知る」ことだけでなく、形として自分にできることをしたいなと考えたのがきっかけです。始めは個人的に募金をしようと思ったのですが、それでは少ししかできないとわかっていたこと、皆に呼びかけることで1円でも多くの募金を集めることができるのではないかと考えたことと、また、何かしたいと思っていても、何をしたらいいかわからないという人がいるのではないかと思って、募金を和洋生に呼びかけたいと考えました。ウクライナのことについて色々と情報をやり取りしていた和洋の友だちがいたので、その子を誘って動き出しました。和洋では募金は生徒会が行うのが一般的なので、生徒会ではない私たちがするのはレアケースだったそうです。実施に向けて企画書や生徒の皆さんに呼びかけるプリントを作りました。企画書は何十回も書き直して大変だったけれど、最終的には約5万円のお金が集まり、中には募金と一緒にお手紙をくださる保護者の方もいて、自分たちで郵便局に行って振り込みをした時には、「やってよかったな」と思いました。
-「困っている人がそこにいる。だから助けたい」という純粋な思いが大切ですね。
-小学時代から比べるとここまで変化・成長するのってすごいことだと思うんですけど、ご自分で何が大きいと思いますか?
やっぱりPBL型授業だと思います。PBLでは全員が意見を話すので必然的に話す機会が多くなりますし、否定しないというルールがあるので安心して自分の思っていることを言えるというのが大きかったと思います。何度も繰り返すうちにベストプレゼンターに選ばれることも増えて、少しずつ自信がついていって、積極的に自分から動いていくことで色々なチャンスを得られることに気づき、だんだん積極的に行動するようになりました。
-PBLで繰り返しの実践があるということですね。
-和洋の6年間で学んだ一番のことは何ですか?
前に話したことと重複してしまうかもしれないんですけど、「アクションを起こすことの大切さ」だと思います。中3の職業体験の時も、豊島区役所を訪問する時も、募金活動についても、先生に相談した時に、どの先生も「じゃあ、やってみたら?」と必ず言ってくれました。そういうふうに言ってくださったので「やってみよう!」と思えたし、仮にうまくいかなかったとしてもプラスになることは必ずあるので、「とりあえずやってみる」ことが大切だということを学びました。小学生の時はやらずに諦めていたことが多かったんですけど、やってみて得られるものがたくさんあるということに気づきました。
-すごいですね…。6年前の自分にどんな言葉をかけたいですか?
「もう少し積極的にやってみて!」と言いたいです(笑)。
-確かに。でも高校3年生になって積極的にできているのだからいいですよね!(笑)
-では最後に、後輩と受験生に向けてメッセージをお願いします!
まず在校生に向けては、6年間というのは思ったよりあっという間に過ぎていくので、まずは学校生活を楽しんでほしいです。あと、和洋は何かをやりたいという時に背中を押してくれる学校なので、思ったことは口に出してみた方がいいよと伝えたいです。
受験生には、体調管理に気をつけて、辛いこともあると思うけど頑張ってください!ということと、今、発表することに苦手意識があったとしても、きっと6年間で変われると思うので、そこに不安を持つ必要はないよ、と伝えたいです。
-6年前の自分に語りかけているかのようですね(笑)。まさに変容したということなのでしょうね。素敵なお話をたくさんありがとうございました!
【X先生からYさんについてのコメント】
誰に対しても優しく接し、人の嫌がることも積極的に行うことができます。周りをよく見ていて色々なことに気がつきますし、自分の意見とは合わないことにもいい加減に応対することなく、じっくり向き合っていました。また、自ら率先して物事に取り組み、最後まで責任をもってやり遂げ、友人たちに良い影響をもたらしてくれました。
6年間の和洋の学びを十分に吸収し、特にプレゼンテーションは彼女の武器になっています。しっかりとした自分の軸を持ち、素晴らしいGRID(やり抜く力)の持ち主です。とにかくまずやってみようという思いでチャレンジを繰り返し、自らの引き出しを広げ、密度の濃い学校生活を送っていました。生徒ながら、心から信頼し、尊敬できる人です。