Stories
-インタビューを通して和洋生の成長をお伝えするStoriesの59回目。今回は、2022年度SDGsみらい甲子園でファイナリストに選ばれた高3のMさんとUさんからお話を伺っていきたいと思います。よろしくお願いします。
Mさん・Uさん よろしくお願いします。
-では、今回も小さい頃どんな子だったかから聞いていきましょう。まずはMさんから話してもらえますか?
Mさん 小さい頃から好奇心旺盛でした。自分が興味を持ったものは絶対取り組んでみたい!と思っていました。英語ができたわけでもないのに小3の時に2週間アメリカにホームステイに行くプログラムに参加したのが一番覚えていることです。
-実際にやってみてどうでしたか?親御さんは心配していませんでしたか?
Mさん やっぱり大変で、言葉が通じない時はジェスチャーで乗り切りました。親は心配していたんですけど、私が一旦やりたいと言ったらやれるまで動かないので、親が折れてくれました。
-体験させてもらえたことに感謝ですね!
-Uさんは小さい頃どんな子でしたか?
Uさん 私もまずは何でもチャレンジしてみようというタイプで、色々なことに挑戦していました。小5、小6の時は生徒会の活動もやっていて、初めてやることばかりだけど、とりあえずやってみようと思って動いていました。
-生徒会の活動に取り組み始めたのはどんなきっかけがあったんですか?
Uさん 生徒会自体に興味があったわけではなかったんですけど、生徒会担当の先生と仲がよくて、その先生がやっているならやってもいいかな、と思ったのがきっかけです。人前で話したり仕切ったりということも多かったんですけど、小さい頃から割と慣れていたので苦になりませんでした。和洋に入ってからもPBLなどで人と話す機会が多いですけど、私は難しく感じることはありませんでした。
-そうなんですね。
-Mさんも同じ感じでしたか?
Mさん 私は学校では前に出るタイプではなかったです。家で空想するのが好きで、ハリーポッターのパロディのような小説を書いていました。
-それぞれタイプが違う二人なんですね。新しいことにチャレンジするのが好きというのが共通点としてあるのが面白いですね。
-では次に、中学受験のことを聞いていきたいと思います。Mさんが中学受験をするようになったのはどういう経緯だったんですか?
Mさん 小4くらいになるとじわじわと塾に通う友だちが多くなってきて、学校の休み時間に塾の問題集をしていることがありました。それを見て「何をやっているんだろう?」と興味を持って「私もやってみたい!」と思ったのがきっかけです。大きい塾に見学に行ったんですけどピンとこなくて、小5から家庭教師の先生に教わっていました。
-そうなんですね。Uさんはどんな流れから中学受験をすることになったのですか?
Uさん 私は元々中学受験をするつもりが全くなくて、公立の中学に行くつもりでした。
私は上に二人姉がいるんですけど、一番上の姉が大学受験のために塾に通い始めたのを見ていて、楽しそうだな、私も塾に通いたいな、と思ったのがきっかけです。塾に通っていると定期的に模試を受けて、それが中学受験用の模試だったので、中学受験があることを知り、私もしてみたいという感じになっていきました。
-一般的には私立中学に行きたいから塾に通おう、模試を受けようという流れですけど、それと逆ですね。
Uさん 私は小学校の時は勉強が嫌いで、嫌いだからやらない、やらないからできない、できないからやりたくない、という感じだったので課題が出るのは苦でした…。でも、休み時間には友だちと話して、放課後の延長みたいな感じだったので楽しく過ごすことができました。
-学校の延長線上に塾があったという感じですかね。
-和洋九段を受験することになったのはどういう流れだったんですか?
Uさん 中学受験をすると決めた時、どんな学校があるかよくわかりませんでした。高校受験がなくて楽だという理由から中高一貫がいいなと考えるようになって、小学校と環境が変わらない共学がいいかなと思っていたんですけど、女子だけの空気ってどんな感じなんだろうと女子校に興味を持ちました。家からの通いやすさだったり学力だったりをふまえて和洋九段が候補に挙がって、校舎見学に参加しました。カフェテリアが一番印象に残っていて、小学校では給食だったので自分でメニューを選んでワイワイ楽しく食事を取れるというのがすごく魅力的に映りました。
-校内で買い物をするということが小学生からしたら大人っぽく見えたのかもしれませんね。
-Mさんが和洋九段を志望するに至った経緯はどんな感じだったんですか?
Mさん 私が初めて和洋九段のことを知ったのは十文字中学で行われた女子中学校フェスタでした。色々なブースをまわる際、和洋九段の先生だけが1対1で声をかけてくれて、優しい学校だなと思いました。その時は別の学校を志望していたのでそれだけだったんですけど、せっかくだから色々な学校を見ておこうということで文化祭やイブニング説明会に参加しました。文化祭では在校生の方が教室で鬼ごっこをしていて、「先生にああしろ、こうしろと言われない空気感がいいな」と思った記憶があります。
-そうだったんですね。その頃はコロナの前でお客さんもたくさん入って賑やかでしたね。
-では次に和洋に入ってからのことを聞いていきたいと思います。中学の時のことで一番印象に残っていることは何ですか?
Mさん パソコンに触り始めたことです。クラスの友だちに「プログラミングキャンプ」というイベントに誘われて、中1の春に参加することになって、その時はイラストレーターでラインスタンプを作りました。
-今回お伺いするメインテーマに近くなってきましたね。体験した時に感じたことを覚えていますか?
Mさん 楽しかったですし、すごく新鮮でした。パソコンって何でもできるというイメージがありますけど、実際に触れてみると意外とうまくいかないことがわかりました。うまくいかない原因を一つずつ解決していくことが楽しかったです。
-その楽しさが今に繋がっているのですね。
-Uさんは何が一番印象に残っていますか?
Uさん 私が一番印象に残っているのは中1の終わりに行ったマルタ島の語学研修です。英語が得意なわけではなかったけど、本場の英語に触れた貴重な体験でした。少ししか英語がわからないので、友だちと相談し合いながら頑張りました。後半には自分たちの思い出の場所をポスターで紹介するというものがあって、ここが楽しかったと文字に起こしてまとめる作業をするうちに自分の言葉で表せることが楽しくなっていきました。早めに本場の英語に触れるということは、今考えても自分にとって大事なことだっだなと思います。
-コロナ前に行われていた行事ですが、Uさんにとってとても大切な体験だったのですね。
-ではメインである探究活動について聞いていきたいと思います。今回取り組んだ内容についてMさんから説明してもらえますか?
Mさん はい。場面緘黙症の人が言葉が出ない時にあらかじめ録音しておいた自分の声を流せるというアプリを開発しました。自分自身が小学校時代に場面緘黙症で、おはようと言われても返事を返せなかったり、グループディスカッションでも自分の意見がいけなかったりしていました。私の場合、外で遊ぶ時には声が出せるので、「ディスカッションでしゃべりたくないんじゃない?」という誤解を受けやすい症状です。認知度が低く、人見知りと間違えられやすいのが現状で、誤解されたままだともっと話をしたくなくなってしまうと思うので、実際に会話をした際に得られる体験が手に入れられなくなってしまうのをアプリで手助けできるのではないかと考えました。
-お~、それはすごいですね!
-Uさんはどんな関わり方をしたのですか?
Uさん 担任の先生から「Mさんがこういう活動をしていて、Uさんは子どものことをやりたいと言っていたから一緒にやってみるのがよいのでは?」と提案を受けたのがきっかけです。場面緘黙症は発症率が低くて診断された子が少ない分、子も親も気づきにくいです。そういう状態であることを知って、私ももっと知りたいと思い、これがよい機会だと思ってMさんをサポートしていこうと決めました。
-なるほど。子どもに携わることに興味を持ったのはなぜですか?
Uさん 元々小学校の頃から保育士になりたいなと思っていたんですけど、中学になってやりたいことがコロコロ変わっていました。姉の子が生まれて子どもと関わることが多くなって、改めて「私って子どもに興味があるな」と思えて、仕事として子どもと関わる環境に身を置きたいなと考えるようになりました。
-一緒に活動してみていかがですか?
Mさん 二人でやるようになったのは高2の12月くらいからではじめは「Uさんは子どもに興味があるんだ~」と思うくらいだったんですけど、活動するうちにすごく私のことを考えてくれるなと思うようになりました。原稿作りや添削を手伝ってもらう中で、聞き手がどう受け止めるかを考えて言葉を選んでくれて、とても丁寧な人だなと思うようになりました。
-Uさんはいかがですか?
Uさん Mさんはプログラミングができて、場面緘黙症の子の手助けをしたいという強い思いがあります。私はMさんがどういう思いでアプリを作ったのか、どういう子に向けてどうなってほしいから作ったのかなどを聞いて、発症率を調べたりまとめたりをしていきました。
-アプリを開発したMさんは海外研修でファイナルセレモニーに参加できませんでしたよね。Uさんは大丈夫でしたか?
Uさん 出られないと知った時、はじめは「え~!」と思いましたけど、留学に行くならしょうがないよな、Mさんに無理はさせられないし、何度も話をして内容は理解しているから頑張ろう!と思いました。当日は2分間で学校やグループの紹介、自分たちの活動のまとめを発表することになっていていたんですけど、ぶっつけ本番でも何とかなる!と思って乗り切りました。
-やってみよう、というのがここでも発揮されたんですね。
-お二人の関係性ってどんな感じなんですか?
Mさん どっちもある程度は相手に任せるという感じです。中学からの仲なので。
-二人の関係性を一言で表すとどんな感じですか?同志とかパートナーとか…。
Mさん う~ん…。「相棒」が一番合っているかな。
-それぞれが役割分担をしていて、相手を信頼しているからこそ任せることができてというのも相棒っぽいですね。
Uさん 私はMさんのことを無条件に信頼していますし、近すぎず遠すぎず、いい距離感を保っていると思います。
-Mさんから見たUさんはどんな感じですか?
Mさん Uさんには裏表がありません。嫌なことははっきりNoといってくれるのでありがたいです。私は誰かと協働する時、何かを頼んでも「本当は嫌なんじゃないかな」と気にしてしまう方なので、本音で話してもらっているとわかるのがいいです。
-素敵な関係性ですね。
-Uさん、実際に発表の場ではどうだったですか?
Uさん 会場に入ると「皆すごい人たちなんだろうな」という空気を感じました。はじめ一人は不安だなと思っていたんですけど他のチームにも一人のところがあって自分だけではないと安心しました。表彰式が終わってから色々な学校の生徒がグループになってディスカッションをしてそれぞれの発表内容に対して意見を出し合いました。これは賞を取ったから完璧なわけではなくて、そこから更によくするためにどうしたらよいか意見を出し合うために行われました。場面緘黙症の方が使っているとそれによる差別が生まれてしまう可能性があるからそうでない人も使えるようになるといいのでは?という意見も出て、Mさんにもフィードバックしました。
-そのような意見を受けてMさんはどう感じましたか?
Mさん 実はそのような意見は理数探究の時にもフィードバックをもらっていました。私は当事者だからこそ使えるアプリという視点しか持っていなかったんですけど当事者以外の人が使った時にどんなことができるかを考えてみたいです。
-対象を広げることで新たな活用法が見つかるかもしれませんね。
-Uさんは今回の活動を通して何を感じていますか?
Uさん 私は将来子どもに関わっていきます。今回場面緘黙症のことを知れたので、その子が苦手だからやらせない、可能性を断ち切ってしまうのではなく、本人が話したいという意欲があるならできるようになる環境だったりアプローチだったりを考えていきたいです。「シャイ」とか「おとなしい」とかまとめられたり縛り付けられることで子どもたちは「自分はおとなしい人間なんだ」と思い込んでしまうと思うので。
-確かにそうですね。私も気をつけていきたいです。
-では最後に、後輩と受験生に向けてメッセージをお願いします。
Mさん では私からは後輩にメッセージを送ります。
今回私は場面緘黙症をテーマにして一つの特性を何とかしたいという壮大なテーマを掲げました。世の中には中高生がトライすることに対して応援してくれる大人や大会がたくさんあります。作られたものが多少荒削りであっても、話をしっかり受け止めてくれるので、どんどんチャレンジしてもらいたいです。こういうことは専門家が発信してというのではなく、私たちが発信する側になって大人と繋がることでたくさんの可能性が生まれてきます。
-確かにその通りですね。和洋九段で実践したいことをまさに体現していますね。
Uさん では私からは受験生に。
和洋九段に入ったら何かに挑戦できるチャンスがたくさんあります。留学もそうですし、生徒会やクラブ活動、委員会活動も中高生が一緒に活動しているので、中学の段階からたくさんの学びや経験があります。中学生で失敗しても高校で反省を生かして頑張ればよいという思いで取り組んでほしいです。
今は受験勉強で大変だと思うけど、中学に入ったら、挑戦する意欲さえあれば何でもできます。失敗してもいいから何にでもチャレンジしてほしいです。
-お二人が二者に向かって伝えてくれたメッセージがともに「チャレンジ」であったことに驚きましたが、そういうチャレンジをし続けてきたお二人だからこそとても説得力あるメッセージだと感じました。
-今後のますますの活躍を期待しています。今回はありがとうございました!
【X先生からMさんについてのコメント】
Mさんは視野が広く好奇心旺盛で、周りの人を包みこみ、寄り添うことができる生徒です。生徒会活動など様々な場面でも学校に貢献してくれています。
その傍ら、多くのコンテスト等にも挑戦し続け、今回その成果が発揮されることとなりました。理数探究と総合学習で取り組んだSDGsの知識を融合し、今回の作品が完成しています。プログラミングの知識を持ち、今回のアプリも0から作成しました。「場面緘黙症」という難しいテーマのもとでのアプリ開発でしたが、このような病気があることと、それを手助けするアプリがあることをもっと多くの人に知ってもらえるよう、更に活動を続けていってもらいたいと思います。
【X先生からUさんについてのコメント】
Uさんは内に秘めた強さと優しさを持ち、細かな気配りができて周りを納得させる力がある生徒です。特に小さな子どもや生活に不自由をきたしている方に対する思いが強く、今回のアプリ開発に携わるのにふさわしい人材だと思います。
3月に行われた「SDGsみらい甲子園」の表彰式では、重圧の中で他のチームに劣らない立派なスピーチをしてくれました。また、他の生徒との交流でも積極的にディスカッションに参加していました。今後も自らの目標に向けて、自分の強みを発揮し続けてくれることを願っています。