Stories
-インタビューを通して生徒の成長をお伝えするStories。第77回となる今回は、高2のRさんからお話を伺っていきたいと思います。よろしくお願いします。
よろしくお願いします。
-では早速インタビューに入っていきましょう。Rさんは小さい頃、どんな子でしたか?
小学校の頃は今より活発で、学校行事が大好きで、運動会で応援団をやったり合唱コンクールで指揮者をしたりしていました。「それは無理だろう」と思うようなことでもとにかく後先を考えずに手を挙げて引き受けてしまう…、そんな感じでした。
-積極的だったんですね。もっと小さい頃からそうでしたか?
そうですね。ダンス発表会で最後のポーズの「せーの」という声かけをしたこともありましたし、仕切るのも好きだったのだと思います。
-そうなんですか。どんなことをして遊んでいましたか?
よくごっこ遊びをしてたんですけど年上の子と遊ぶと家族ごっこでも中心人物になれないのが不満でした。
-人となりがわかるエピソードですね。ありがとうございます。
-何か習い事をしていましたか?
ピアノやバレエもやっていましたけど、珍しいのはフランス語で、今も習っています。
-お~、それはすごいですね!自己紹介してみてもらって良いですか?
あはははは。(この後、流ちょうにフランス語での自己紹介をしてくれました)
-すばらしいですね。
-フランス語を習うというのは珍しいですが、どのような流れで習うことになったんですか?
母もすごくフランスが好きで、母が学生時代お世話になっていた教室に私も通い始めたのがきっかけでした。子供用のクラスもあったのでそこに10歳くらいから通い始めました。
-もう7年目ですか。習っていてどうですか?
高校生になってからはなかなか時間を取れないんですけど、検定試験は受けています。小6でフランスに旅行した時に結構現地の方としゃべれたのでそれがすごく嬉しかったです。
-それがまたいいモチベーションになってるのかもしれませんね。
-何か将来の目標はあるんですか?
今、グローバルコースにいるんですけど、将来的には外国でお仕事したり生活したりしたいなというのがあります。
-なるほど、そうなんですね。詳しくはまた後ほど伺っていきますね。
-では次に、中学受験のことを聞いていこうと思います。Rさんが中学受験をすることになったのはどのような流れからですか?
さっきフランス語のことを話したんですけど、小さい頃から英会話も習っていて、小5の時にまわりの子たちが中学受験の勉強をし出したタイミングで、「中学受験用の塾に行くのと、英会話の塾に行きつづけるのどっちがいい?」と母に聞かれた時、「英会話を習いつづけたい」と答えました。小6でTOEFL Juniorを受けた時、英検準2級レベルになっていることがわかって、このまま公立中学校の英語教育を受けるのは、せっかくのレベルが下がってしまうのではないかと親が思って、英語に特化した学校に絞って探している中で和洋九段を見つけたという感じです。
他の学校では帰国子女でないとは入れないなどの縛りがあったんですけど、和洋は英語を頑張りたい子なら誰でもグローバルクラスに入れるし、英語の授業でアドバンスクラスに入れたら帰国子女の子たちもいて結構高いレベルで授業を受けられるということで、和洋に学校見学に行った時、自分にすごく合うなと思って受験することになりました。
-どんなところが合うと思ったんですか?
私は結構積極的な方ではあったんですけど、運動神経もそんなに良くないし、騒がしい方ではないので、和洋の柔らかい雰囲気だったり先輩の優しさだったりが良いなと思いました。校庭がないからあまり運動しなくて良いのかなというのもあったかも…。あとは、学校説明会で高1の長野の研修旅行の映像を見た時にすごく楽しそうだなと思ったのも選んだ理由の一つです。
-そうなんですね。ありがとうございます。性格的に学校の雰囲気が合っていたのでしょうね。
-そういう流れだと、受験も英語だったんですかね。
そうです。英語の筆記とインタビューで受験しました。面接でSDGsのことを聞かれてびっくりしました。
-Rさんが中学受験をしたのは2020年度ですからまだSDGsの認知度が高くない時期でしたね。どんなことを答えたんですか?
SDGsのことを知らなかったので、「SDGsって何ですか?」という質問をして、教えてもらった後に自分なりの考えを答えました。
-ちゃんと質問できるのがすごいですね。はじめに答えられなかったというところがインパクトになって今でも覚えているのでしょうか。
-では入学後から中学時代のことを聞いていきますが、入学する時が新型コロナの影響を大きく受けていた代ですよね。
そうです。いきなりオンライン授業から始まりました。6月になって初めて対面であった時は「この子は思ったより背が小さいな」「この子は意外と背が高いんだな」とびっくりしたのを覚えています。中学生だったので画面上だと集中しづらかったりチャット機能をうまく使いこなせなかったりで苦労しましたけど、小学校の時からスマホをいじっていたので結構すぐに慣れました。
-通い始めてからの思い出はありますか?
最初のうちは学校に行けること自体がすごく嬉しかったです。学校に行けばみんなに会えるという楽しさがありました。小学校の時は共学でしたけど中学から女子だけになって、気楽で楽しかったです。あとは最初のうちは電車での通学が大変でした。
-中学時代で1番印象に残っていることは何ですか?
中1、2では旅行がなかったので中3で九州に修学旅行に行ったのが思い出です。長崎に飛行機で行ったんですけど、やはり小学校の修学旅行とはスケールが違うなと思いましたし、本当の旅行というか冒険でした。すごく楽しかったです。
-新型コロナの影響で一度も旅行に行けていない中から、いきなり飛行機での修学旅行というのは冒険、という表現が合うように感じますね。
-行った場所や体験したことで印象に残っていることはありますか?
長崎での自由行動の時に原爆資料館とその周辺に行ったんですけど、私たちが制服だったせいか地元の方が話しかけてくださって、一緒に鐘を鳴らしたのが印象に残っています。
-実際に見学してみていかがでしたか?
はじめは自分が行きたいわけではなくて、グループの子が「長崎の原爆資料館は行った方が良いよ」と提案してくれて、ついていった感じでした。敷地に入った瞬間に空気が変わるというか建物の中の空気が重いというか、今はとても街並みがきれいですけど、そういう一面も持っているところなんだなと感じました。
-大切な視点ですね。
-1、2年で色々なことができなかった分、中3では楽しめましたか?
そうですね。はじめの2年間は不完全燃焼だった分、中3は思う存分遊んだり中学生らしいことをしたりして満喫しました。
-それは良かったです。
-そのような中で高校生になったわけですが、高校生になって変わったことはありますか?
高校に入ってから1番自分の中で大きな出来事が、高1の夏休みに3週間イギリスに留学したことです。中学の段階である程度英語を話せるようになっていたので、それを活かして語学研修ではない体験ができるプログラムにしたいなと思っていて、自分の興味のある芸術の分野を学びたいと考えた時、ヨーロッパ圏の中で英語が通じるところということでイギリスを選びましたが、この時期に留学できたのは自分にとってすごく大きかったと思います。
-とても興味深いですね。体験したことをぜひ教えてください。
留学に一人で参加した時まだ15歳だったので、イギリスでは街中を一人で出歩くことも制限されていましたし、入国するのにも保護者の同意書が必要でとても大変でした。他の人がどんどん入国を認められてパスしていく中で、自分だけ20分くらい止められて色々とチェックを受けました。英語圏に一人で行くこと自体が初めてだったし、このままイギリスに入国できないんじゃないかとすごく不安で…。でも最終的にはその係の方が待ち合わせで来ていたタクシーのところまで送ってくれて何とかホームステイ先のおうちまで行くことができました。
-初めての体験としてはとても緊張感のあるものでしたね。
-学校ではどんなことを体験したんですか?
私が参加したのはロンドン芸術大学のサマースクールで、主に13歳から15歳のイギリス以外の人が参加する授業でした。日本人は私しかいなくて、ロシアや中国から参加している子が多かったです。
-そこでの気づきはどんなものがありましたか?
やっぱり日本とは視点が違うなと感じました。例えば、日本の教育だと技術的な部分も含めてできあがった成果物を評価することが多いですけど、その授業では校舎の中を歩いて、「じゃあ、今からここで5秒以内で絵を描いて。次は10秒で。30秒で。1分で」と順番に書いたものを並べて過程を評価するというものがありました。過程を大切にするというところがすごく新しくて楽しかったです。
-とても独特ですね。現地の子は参加していなかったんですね。
そうです。この後イギリスの高校に入学する子で、夏休みに現地の高校を見るついでにサマースクールに参加してみようかという感じで取っていた子が多かったです。
-そうなんですね。他にはどんな活動をしましたか?
本当に幅広く色々な活動をしました。人のデッサンや粘土細工もしましたし、その学校がファッションに力を入れているところだったのでポスターを切り貼りしながら服を作るという活動もしました。そこでほめてもらえたのが嬉しかったです。
-ファッションデザインの授業ですね。おもしろそうです。どんなところを評価してもらえたんですか?
スカートの形に結構こだわっていて、紙だからこそできる表現を意識して作ったのですが、そこを評価してもらえました。
-すばらしいですね。もの作りとはいえ、コミュニケーションは英語なわけですよね。そこは全然苦労はなかったですか?
そうですね。コミュニケーションをする中で「ん?」みたいな顔をされる時もありましたけど、そこは全然もう気にせずにいきました。
-なるほど。細かいことは気にせず、どんどんコミュニケーションを取っていこうとする姿勢が大切なんでしょうね。
はい。3週間で仲良くなって、まだ連絡を取り合っています。
-よい関係が作れたんですね。
-他国の若者との違いを感じた部分はありましたか?
日本の子は全体的に丁寧で器用なんだなと思います。ゴールを決めて計画的に順を追って行っていくというのが得意ですけど、その時出会った中国やロシアの子たちはやりながら考えるというか、心のままにダイナミックに、自由に制作をしているように感じました。
-なるほど、そんな違いがあるんですか。それぞれの良さがあるのでしょうね。
-生活をしている中で大変だったことはありましたか?
やはりアジア系の子供が一人で歩いていると奇異な目で見られたことがありましたし、バスに乗っていた時に人種差別的な振る舞いをされた時もありました。でも、色々な人種の人が暮らしていて、それぞれが別の基準で過ごしているからこそ、お互いに助け合おうという連帯感もあるなと感じました。
私もスーパーのセルフレジの使い方がわからなくて困っていたら、30歳くらいの男性が声をかけてくれて助けてくれました。逆に、電車に乗っている時におばあちゃんが急に話しかけてきて、電車のWifiの繋ぎ方を教えてくれと頼んできたり、どう見ても私は現地の人じゃないのに道を聞かれたりして、結構人と人の距離が近いんだなと気づきました。向こうも気軽に頼ってくれるんだから、こちらも周りの人に頼っていいんだなという安心感も生まれました。
良いことも悪いことも含めて、日本では絶対ないような体験がたくさんあったので、メンタルも強くなったように思います。
-高1でそういう体験ができたのは良かったですね。
-ものの見方で変わった部分はありますか?
日本に住んでいると、良くも悪くも「これが正解」みたいなとらえ方がかなり強いと思います。そういう意味では、色々な視点でものを見るということは意外と難しくて、それが外に出て行くことで少しできるようになったと思います。
-自分と違う文化圏に行って、様々な価値観を持った人たちと関わったからこそできるようになったのでしょうね。素晴らしいことです。聞いていてワクワクします。
-その後はどのようなことを経験しているんですか?
今年の夏には母と一緒にオランダに行きました。
-それも詳しく教えてほしいです!
私は芸術系の進路を考えていて、将来的には学芸員になりたいんです。美術館にも関心があって、特に外国文化と日本文化が融合した芸術であるジャポニズムにも興味があります。オランダは芸術面で日本との関わりが深い国でそういう資料や作品が多くあるので、母が誘ってくれて行ってきました。
-その話を聞いたことがあるなと思ったのですが、文化祭の時、講堂で発表していましたね。おもしろい見方だなと思った記憶があります。なぜそのような分野に目が向くようになったんですか?
これもやはり母の影響が大きくて、小さい頃から美術館や博物館、バレエの鑑賞などによく行っていたので、芸術が自然に好きになっていました。映画を見るのも好きで、休日だと4本くらい見る事もあります。
-とても恵まれた環境ですね。ちなみにおすすめの映画はありますか?
う~ん、なんですかね…。色々ありますけど一番はチェコの「ひなぎく」という映画ですかね。映像の表現の仕方もおもしろいなと感じますし、映像の中に芸術的な要素も感じられるところが好きです。
-なるほど。それをすらっと言語化できるところがすごいですね。
言葉にできないことを、映像や作品を通して表現するのが芸術だと思っているので、そういう要素が表れている作品が好きです。あとは、小さい頃から本を読むのも好きで、新しいものに出会うというか、知れるのがすごく楽しいと感じます。
-すごいですね。オランダに行った中で一番感動したり、新たな創作意欲をかき立てられたりしたものは何でしたか?
レンブラントの「夜警」という絵があったんですけど、その絵は世界史の資料集にも載ってる絵で、これまで何度も見ていました。それを初めて生で見て、やはりすごいなと感じましたし、想像以上に大きい絵で圧倒されました。ちょうど修復中のタイミングでしたけど、そんな中でも見られるように展示されていて、日本だと裏に引っ込めてしまうと思うので、こういう展示の仕方もあるんだなと色々な面で感動しました。
-なるほど。そういう展示もあるんですね。
-他にはありましたか?
ゴッホ美術館にゴッホが描いたジャポニズムの作品がたくさん展示されていて、そこでも気づきがありました。
ゴッホが日本の作品に影響を受けて描いた作品はたくさんありますけど、日本人とは違う価値観が反映されているなと感じました。例えば歌川広重の浮世絵を油絵で模写している作品があって、日本人の感性だと繊細に描かれているものが、ゴッホの絵だとダイナミックというか、思い切りがあるというか、描いている側の気持ちがそのまま乗っかっているような感じに描かれていて、おもしろいなと思いました。
-実際に見て感じたことだけに言葉に重みがありますね。ありがとうございます。
-他にオランダであった出来事で思い出になっていることはありますか?
動物園に行った時、オプションをたくさんつけられてしまって高く買うことになったチケットを交渉して安くしてもらったということがありました。
-え~、そんなことができたんですか。英語ですよね?
そうです。クレームを入れるみたいな出来事ではありましたけど、今まで英語を頑張ってきたからこそできたコミュニケーションだったので、ちょっと嬉しかったです。
-さすがですね! とてもまねできないです。
-この話はいくらでも聞けそうですが、次の話に移っていきましょうか。
-Rさんは9月末に行われた文化祭の実行委員長を務めましたよね。そのことを少し聞いていきたいと思います。
-どのような経緯でそこに至ったのですか?
小さい頃から学校行事が大好きだったので、文化祭という大きな行事の企画や運営にも興味があったし、自分も文化祭に貢献したいなと思って中3の時から文実を務めてきました。でも、下級生として文化祭に関わるのと、トップに立ってやるのとでは、苦労の質が大きく違いましたし、ものの見え方も全く違いました。後輩の時は指示を受けたことをしっかりこなすということが中心でしたけど、高校2年になって「こんなにやることがたくさんあるんだ」と気づきました。特に予算の部分ではどこにどれくらいの予算を配分するかというところまで考えたり計算したりするのが大変でした。
-なるほど、立場によってそういう部分も変わりますよね。
-他に大変だったことはどんなことがありましたか?
委員長ということで人に頼らなければならない部分が多かったんですけど、はじめはどのように任せていけば良いかわからず、困っていました。
-確かに「人に頼る」て難しいですよね。
-どのようにそれを作っていったんでしょうか。
高2の文実はグローバルコースが私しかいなかったんですけど、だんだん仕事以外のことの話もするようになっていくうちに仲良くなって、頼ってもいいんだなと思えるようになりました。「悩んでいることがあったら話してね」と言ってもらえたことも大きかったと思います。
-仕事の話だけでなく、色々な話をする中で関係性の質が変わっていったんでしょうね。
-チャレンジしてみてよかったことはありましたか?
今回のテーマは「こっから」で、これまでのものをガラッと変えていこうというイメージがありました。実はパンフレットの表表紙、裏表紙ともに私が描いたんですけど、これまでは親しみやすいイラストだったりデジタルのイラストだったり、アニメ風のものを採用することが多かったのを、今回は映画のポスターをイメージして、写真とドット絵を組み合わせて作ってみました。ちょっと暗い感じなのでは?という指摘もあったんですけど、悩んだ末、最終的にはこれで出そうということになって、当日見に来くださった美大に通っているOGの方が私のところに会いに来てくださって、パンフレットの絵をほめてくださいました。それがすごく嬉しかったです。
-これまで積み重ねてきたものを今回の文化祭を通して新たなチャレンジとして試みて、周りの協力も得ながら作り上げていったという感じでしょうか。
将来目指している学芸員でも企画展の展示だったり運営だったりをお仕事として行っていくので、今回色々と経験できたことは将来に繋がるのではないかと思っています。
さっきも話したとおり、歴史的な美術の関わり合いというものに興味があって、日本で大学に通って、色々なことを身につけた後、できたら大学院でオランダに行って、西洋人から見た日本という視点で研究したいと考えています。
-いや~、壮大ですね。Rさんがこれからどんな人生を歩んでいくのか、とても楽しみです。卒業してからも「今、こんな風に頑張っているよ」とぜひ報告に来てください。楽しみにしています。
-では最後に、後輩と受験生にメッセージをお願いします。
両方に重なるメッセージになりますけど、やっぱり自分にとって好きなことって人生の糧になると思います。好きなことを見つけるのってすごく大変だから、若いうちからとにかく色々なことに取り組んで、吸収していくことが大切だと思います。あまり好きじゃないかなと思うようなことでもちょっと触れてみると、今後の道が広がって楽しくなるかも知れないので、とにかく色々なことをやってみてください!
-多くの経験が重層的に折り重なって、これからのRさんを作り上げていくのでしょうね。一つ一つのエピソードの中に、心に響く言葉がたくさんありました。これからも新たなことにどんどんチャレンジしていってください。ありがとうございました!
【X先生からRさんについてのコメント】
Rさんは芸術的センスに長けており、他人の気持ちを想像できる優しい生徒です。普段は穏やかなのに、絵を描く時には強いエネルギーをもって自己の世界観を表現できるところも彼女の魅力です。
高校生になり、これまで以上に主体的にチャレンジする積極性が出てきて,自分の進路実現のために前向きに努力をしています。