和洋九段女子中学校高等学校

Stories Vol.2

Vol.2 高2 Hさん

ー和洋生が自らの成長を語る「Stories」。今回は高2のHさんです。よろしくお願いします。

よろしくお願いします。

ーまずは和洋に入る前のことを少し伺っていいですか。Hさんはどのような小学校生活を送っていたのでしょう。

私は小3になるタイミングで転校したんですけど、新しい学校では最初から友だちもできて、運動も好きで、というタイプでした。1人で何かをするのは苦手で、皆と一緒に何かをするのが好きでした。社会科の授業で模造紙に調べたことを書いて教室の前で発表するような場面では、自分でやることが決まっていたので大丈夫だったんですけど、1人でスピーチをするのはすごく苦手でした。とても緊張してしまって、うまくいかなかったです。一回間違えると止まってしまって、恥ずかしかった思い出があります。

ー今のHさんからは想像がつかないのですが、和洋に入ってからの成長が大きいということでしょうか。中学受験を決めたのはどのような経緯があったんですか?

私が住んでいるのは中学受験が活発な地域で、クラスの8割くらいが中学受験をしました。正直に言うと、小4くらいには結構たくさんの友だちが塾に行き始めて、一緒に遊んでくれる友だちがいなくなってしまって、そんな中で自分も中学校に入った後のことを考え始めた…というのが受験をしようと思ったきっかけです。地元の中学校にはやりたい部活もなくて、「私が通うのはここじゃないな」と考えるようになりました。

ー小学校の時はどんなことをしていましたか?

小学校低学年の時はバレーボール、その後は剣道をしていました。でも試合が大の苦手で、あまり好きになれませんでした。
ただ、小学2年生の時から区の合唱団に所属していて今も通っているんですけど、その頃から今まで、皆で一緒にハーモニーを作る、皆で奏でるのが好きで、とても居心地の良い空間です。

ーHさんは仲間と一緒にいること、仲間と何かを作ることに「居心地の良さ」を感じるんですね。そういう感じ、いいですね。
ー和洋九段を受験しようと思ったのはどのような流れからですか?

う~ん。全く記憶にないんですけど…(笑)私は元々公立の中高一貫校を目指していて、受験間近に塾からもらった「適性検査」を行っている私立中学一覧を見て候補にあがりました。はじめ女子校は全く候補に入れてなかったんですけど、パンフを見て「ここ、いいな」と感じたことは覚えています。学校説明会に参加して、この学校も受けてみたい!と思うようになりました。ただ、その時は校舎見学をしなかったので、校舎全体を回ったのは入学してからです(笑)

ー第一志望ではなかったんですね(笑)でも、今こんなに輝いた生活を送ってくれているのはすばらしいことだ思います。
ー小学校の時は1人で発表するのが苦手だったということですけど、それがどのように克服されていったのか、覚えていますか?

入学してすぐの頃はタブレットも全然使いこなせなかったし、プレゼンの資料を作るのも下手でした。周りのみんなが上手だったので、「こう作ればいいのか」という感じでいいところをどんどん盗んでいました(笑)特に中1の頃は社会の授業で毎週PBLの時間があったので、回数をこなすうちに自分の中で「伝え方のパターン」ができていって自信に繋がっていたように感じます。

ーなるほど。まわりにいる手本になる人の「良いところ」をまねて、それを繰り返して自信に繋げていったんですね。これは後輩の皆さんにも役に立ちそうな考え方ですね。
ーでは、今日までの数々のアクションについて順に聞いていきたいと思います。まず、中1に企業訪問をしましたよね。それはどのように生まれたんでしょう?

中1の学習発表展がきっかけです。いくつか候補がある中で、最終的に中目黒にあるユニリーバさんにMさんと先生と一緒にお邪魔することになりました。生まれて初めて会社に足を踏み入れ、初めて学校以外の大人と話をし、生まれて初めて名刺というものをいただきました。自己紹介をしたときも緊張しすぎてクラスまで言ってしまって…。でも、とてもやさしく色々なことを教えてくださって、社内も案内してもらえただけでなく、シャンプーのセットまでお土産としていただきました。とても楽しかった記憶があります。
会社という場所に足を踏み入れたのが初めてで楽しかったですし、自分たちが考えてきた質問に丁寧に答えてくださってとても嬉しかったです。この会社で働きたいね、とMさんと帰りに話しながら帰りました。

ーそれが全てのスタートだったんですか。5年前のこととは思えませんね。ちなみに中2のSDGs関連団体への訪問はどこに行ったんですか?

CIESFさんに行きました。チームではそれぞれ別のSDGsのゴールに興味があるメンバーが集まっていて、ある子は4番の教育について、私は6番の水の問題について興味を持っていました。それぞれが行きたい企業や団体をあげていく中で、皆の興味を全て含んでいるのがCIESFさんで、そこにお願いをすることにしました。

ーその時に印象に残っていることはありますか?

ポルポト時代のことなど、カンボジアの歴史を初めて知り、大きな衝撃を受けました。自分たちの生活がいかに恵まれているか、自分たちにできることはないか、皆で話し合う中で、寄付型の自動販売機があることをCIESFさんに教えていただき、別のグループが訪問していたKIRINさんのものもあると知って、学校に提案しようということになりました。学校に帰ってすぐに校長先生のところに行きました。

ーいきなりの行動だったんですね(笑)

とにかく行動しなければ!という勢いがありました。それくらいカンボジアのお話の衝撃が大きかったんだと思います。

ー大きな衝撃が行動への衝動に繋がったんですね。論理だけでは説明できないものがありますね。感覚的で良いと思います。校長先生は何ておっしゃってたんですか?

「それ、いいですね」と肯定的に受け取ってくださいました。その後、生徒総会に提案するため、昼休みに何度も集まってどうすれば認めてもらえるのか考えました。

ー躍動感のあるアクションが続きますね。その後にはKIRIN School Challengeに中2、3と参加しましたよね。これはどういう経緯で参加することになったんですか?

親と学校の先生の両方からこういう企画があるから出てみたら?と言われたのがスタートです。私はやっぱりそういうのに参加するのが苦手だったので「出ない」と言っていたんですけど、Mさんが「一緒に出ようよ」と言ってくれて参加することになりました。

ーここでまたMさんが出てくるんですね。すごい行動力です(笑)

中2でこれに参加していなかったら中3でも参加しなかったでしょうし、その後のアクションも起こしていなかったので、この時のGoサインが今までの行動の原点になっていると感じます。

ーこの時にはまだ苦手意識が残っていたとのことですが、どういう不安があったんですか?

それまでは校内での行動だったので、安全というか、安心してできたんですけど、やっぱり外のそういうイベントにはすごい人がたくさん出ているから私たちなんて出るのは無理、と思っていて抵抗がありました。
実際に行ってみると、何度も参加していてスタッフさんと親しげに話している人もいて、すごく緊張しました。私の班は全員初挑戦の人で、「何でもやってみよう」という思い切りがありました。

ー話し合いでは、どのようなところに気をつけて進めていったんですか。

メッセージ性にこだわりました。写真も使ったので、どの画角から撮ると伝わりやすいか、というのも話し合いをしながら決めました。

ー1年目で賞を取ったわけですけど、中3でも参加しましたよね。

はい。中2の時に参加して楽しかったのとテーマが違ったので参加しました。でも、一度目の印象が強すぎて、2回目についてはあまり覚えてないんです…。

ーところで、「SDGsすごろく」はどのようにできあがったんですか。

これも文化祭の学習発表展に何をするか、というところから生まれました。中学3年の文化祭だったので、中学時代に学んできたSDGsをふまえて何か作りたいね、という話になりました。そこで、日本ハビタット協会のスマイルトイレプロジェクトに参加した時に体験したすごろくにヒントを得て、複数のメンバーで考えて作ることになりました。途中、メンバーが抜けたり入ったりしましたけど、最後に残ったのが今のチームです。

ーなるほど、それが「Team ami」ですね。すごろく制作の苦労話を聞きたいところですが、それだけで一回分の話になりそうなので(笑)、これはまた別の機会にしましょう。
ー体験してもらっての反響などはいかがでしたか?

中2のグローバル遠足でお世話になった企業や団体の方にも文化祭に来ていただいて体験してもらいました。お褒めの言葉をたくさんいただいて、朝日新聞の方からも注目していただいて「これは成功したかな」という思いになりました。

ーこの後、色々なところで実施させてもらいましたよね。

はい。ポプラ社さんとか日本大学商学部のチームサステナさん、うちの学校に和洋国府台の方に来てもらって実施もしました。あと、21世紀型教育機構でもワークショップを行わせていただきました。

ーコロナがなければ何十社も行っていたことでしょうね。今も他校からお声をかけていただいていますし、これからもぜひ広げていってください。
ーコロナで制限された部分もあったかと思いますが、その中でも進めていっていることはあるんですか?

全国にこのすごろくを広めていくためにすごろくの改良を行ったり、その資金調達のためのクラウドファンディングに繋がる「超文化祭」に参加するため、動画を撮り直しました。
「SDGs探究アワード」の時の動画はルール説明を入れなければならなかったのでそれが中心でしたが、新しい動画では「私たちはこのような思いで活動しています」という内容を盛り込みました。

ー新しい動画はその時以外公開されていませんよね。HPにぜひアップさせてください!
ーSDGs探究アワードでは優秀賞を受賞されましたが、そこに至る話を少し聞かせていただけますか?

表彰式が大阪で行われる予定になっていたので、「受賞してみんなで大阪に行こう!」という流れで応募しました(笑)動画を作り上げたときも受賞できるとは思っていなくて、「みんな頑張ったよね!やりきった!」という思いでいたところ、思いがけず受賞することができて、中学校生活で一番嬉しかったです。みんなで飛び跳ねて喜びました!

ー「嬉しい」というひと言では言い表せないものがあったんでしょうね。
ー今個人で起こしているアクションはどのようなものですか?

「伝統工芸を若い世代に伝えるための活動」を行っています。
今行っていることは剣道や書道を小さい頃にやっていたり、けん玉やあやとりも好きだったことがベースになっていると思います。伝統工芸を継承している職人さんが減っているのをニュースで見たのが心に引っかかっていて、自主活動で「自分の起こせるアクション」を考えた時、「伝統工芸のためにできること」を実践していこうと決めました。具体的には、伝統工芸を若い世代に伝えたり、職人さんと若者とを繋ぐ、ということを広めるために、そういうサイトを運営している企業にアポイントを取りました。

ーここでアポイントを取ろうとするのがすごいですよね。どのようにそのサイトに行き着いたんですか?

最初は職人さんを訪問することを考えていたのですが、コロナ禍ということもあって難しいな、と考えて他の方法を色々と調べるうちにその企業にたどり着きました。

ーアポイントを取った時に先方はどのようなリアクションでしたか?

高校生が電話をかけてくるということを想像していなかったのか、学校の活動なのか?高校生が取り組むのか?などたくさん質問されました。怪しい人と思われていたかもしれません…。それを先生に相談したところ、「Zoomで思いを伝える時間をもらったら?」というアドバイスを受けて、熱い思いを伝えました。企業さんからも行っていることを聞いて、「ここでアクションを起こしたいな」と改めて感じることができました。

ー今一緒に活動しているのは大学生ですよね。とてつもない行動力ですが、前のめりになって半歩踏み出してみる勇気があれば、世界は広がっていくということを表しているように感じます。
ー今はどのようなことをしているんですか?

今は4月末締切で、SDGs関連の記事を書いています。私が伝えたいのは主に若者対象なんですけど、そのサイト自体は大人もターゲットにしているので、大人の方にSDGsを伝えていきたいという思いもあります。

ーそういう橋渡しもしているんですね。

伝統工芸品は高価なものが多くて、実際に買うのは大人であることも多いので、そのような方にも高校生としての思いを伝えていけたらな、と考えています。

ーHさんの話を聞いていると、「原寸大の自分を出したい」という印象がしますね。背伸びをしている感がありません。思いが前面に出ていて、見栄を張ろうとかいいところを見せようとか、そういったところがなくてストレートな思いが伝わってきますね。これからも大切にしてください。
ー今後の活動についてはどうですか?

記事を書いた後の活動は未定なんですけど、職人さんにインタビューしていけるといいな、と考えています。

ー3月にはSDGs169ターゲットアイコンの日本版発表会に登壇されましたけど、そのイベントに参加してみての感想はいかがですか?

SDGsが注目されて広まってきているんだなというのを実感できたのが嬉しかったですし、自分の思っていることを言葉に出すことで自分の考えを改めて見直すよい機会になったと思います。

ー和洋生活もあと2年ですが、和洋生のうちに実現させたいことは何ですか?

すごろくのことも含めて、企業をはじめ私たちが今まで繋がってきた縁というものを大切にして、後輩のみんなに自分たちの思いも伝えながら引き継いでいきたいです。あと、コロナ禍でも学校生活が楽しくなる活動をしていきたいと思います。

ー制限がある中でもできることを考えていきたい、というのがいいですね。後輩もこのインタビューを読むでしょうから、それをきっかけに繋がりができるといいですね。興味がある方はぜひ高2のHさんを訪ねてください!(笑)
ー和洋を卒業した後のビジョンを教えてもらえますか?

2つあります。まず、大学で国際情勢について学びたいです。CIESFさんから聞いたカンボジアの実態や、スマイルトイレプロジェクトで聞いたアフリカのことについて更に学び、考えていきたいです。もう1つは、これまで何回か自分たちの取り組みを取材していただく機会があったのをきっかけに、情報を発信することに対して興味を持ったので、そういう職業に就けるといいな、と考えています。世界の現状を正しく伝え、より多くの方に知ってもらえると良いと思います。

ー学校の頃から色々とお話を伺いましたが、その軌跡をたどってみて、どうですか?

本当にあっという間だったな、と感じます。もう高2になってしまって…。小学校の時の自分とはまったく違う自分になっていて、和洋での今までの生活は、その当時はがむしゃらで大変だったけど、たくさんの貴重な体験ができたと思います。

ーその中で一番残っているものって何ですか?

う~ん、改めて全体を見てみると、今の和洋生活が始まったといえるユニリーバさんに訪問したことですね。将来学びたいことを見つけられたのはCIESFさんでカンボジアの話を聞いたことです。

ーユニリーバさんでは初めての企業訪問で感じたドキドキや大人の方にしっかり話を受け止めてもらえた喜びがありましたよね。CIESFさんではカンボジアの歴史を知ったことの衝撃。そのような沸き立ってくる感覚を大切にすることが次のアクションを引き起こす原動力になっているのかもしれませんね。
ー改めて、中高一貫校で学べるよさって何だと思いますか?

実はギリギリまで和洋に入学するか公立中に行くか迷っていました。でも、高校入試がなくて大事な中学、高校の6年間を伸び伸びと過ごせるんじゃないかな、と思って和洋に入学したら、本当にその通りでした。いい意味で時間があるからこそ、自分のやりたいこととか周りの人間関係とかを丁寧にたどりながら生活できていると思います。高校受験があるとどうしても中1の時から成績に縛られることになると思うので、中高一貫だからこそ自由に色々なコネクションの中で自分たちも行動を起こすことができたのかな、と思います。

ー確かに途中に高校入試があるとアクションを起こし続けるのは難しかったかもしれませんね。
ー自分が和洋九段に合っているな、と感じるところはどんなところですか?

マイペースな子がたくさんいるところです。あとは先生と生徒の距離が近くて色々なことを相談できるところです。人数も多くないので、担任の先生だけでなくたくさんの先生が色々な生徒のことを知っているというのも安心できて良いな、と思います。

ーでは最後に。後輩に向けてメッセージなどあればお願いします!

何でもやってみたらその先の和洋での生活が変わると思います。勇気を持って一歩踏み出してみてください!

【X先生からのHさんについてのコメント】
彼女の魅力をひと言で表すのは難しいですが、「本質的なファシリテーター」だと思います。チーム力を上げるための「修正力」や「視点をずらして考えられる柔軟性」そして何よりも「協働性」に富んでいます。彼女がいるとチームのメンバーそれぞれが持っているよさがより増幅されて、行動変容に向けた大きなうねりを生み出していますね。

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